Survivartでこれから行っていくドキュメント製作のために韓国へ。今回は東京で知り合った人や、今までコネクションがあった人中心だったのでオルタナティブ系で活躍している人が多かった。日を重ねるごとにインタビュー対象の方が増えて遊ぶ暇もなかったけど、やっぱりご飯はおいしいし安い。韓国に行ったときの楽しみであるサムゲタン(蔘鷄湯)も食べられたし。やっぱり旨い。
さてさて韓国でのアートシーンはサムソンの隠し財産問題(大量に美術作品を隠し持っていた)もあり、大手ギャラリーは取材させてもらえなかった。東京のアートフェアとも深く関わってくるコレクターの動向もSurvivart的には気になるところ。今回取材対象になった人々が異口同音に話していたのが「ミドルエイジの問題」「不動産投資から美術投資の問題」だった。
「ミドルエイジの問題」とは美術市場においてミドルエイジ(40代から50代)はスルーされて、若手が多く市場に投入されていること。またミドルエイジ以上の60代、70代の人はある種の権威であるので、高く取引されている。確かにオークションなどでは、ほとんどが20代から30代のアーティストの作品が高く取引されている(びっくりするような金額で)。ミドルエイジ世代があまりにもスルーされていることを問題視している人が多かった。特にその世代はIMF危機以降の辛い経済状態の中をくぐり抜けてきたにもかかわらず、あまりにも冷遇されている、という。
「不動産投資から美術投資の問題」とは韓国の税金関連法案と関わってくる。不動産に対する税金が引き上げられ、美術作品に対する税金が免除となったことが引き金となり、投資対象が不動産から美術品へと変わった。それを契機に韓国では美術品の価格が急騰に繋がっていく。もちろん、美術品を所有することの「内面的な充実感」を購入者が求めた、とも言えるわけだけど、基本的にはこの税金対策が重大な転換期であったようである。美術品の流動性が低い日本から見れば、韓国の現状は一つのリソースとなるかも知れない。もちろん良い面/悪い面、どちらも客観的に見ないといけないけど。今回の取材対象がオルタナティブに活動する人が多く、どちらかと言えば急激な価格上昇による歪みを問題視する人が多かった。
今回の取材で何度も強調していたのは、僕らは現在の状況や取材対象に対して批評したくて取材しているのではない、ということ。この取材はジャーナリズムに基づいて行っているわけではなく、2008年3月現在の本人たちの語りを記録しておくことだったから。
短い期間であったために広範に取材できた、とは思わないけど、ファースト・ステップとしてはまずまず。4月の東京アートフェアもあるし、これから本格始動とあいなりますか・・・。